アーティストくぼあやこさんの絵本の原画展「brasserie et monogatari」が、練馬駅前のブラッスリーBon Courage でスタートしました。
くぼさんに絵本出版に至るまでの背景や、イラストレーターとしての現在の活動などについて、お話を聞きました。
― 今回、ボンクラージュで開催する「brasserie et monogatari」は、フランスのLirabelle社から出版 された、くぼさんの絵本「Le Rat de Ville et Le Rat des Champs(いなかのねずみ と とかいのねずみ)」の原画展となりました。
「いなかのねずみ と とかいのねずみ」は子供のころ『おはなしレコード』でよく聴いていた、思い出深い物語です。質素な暮らしをする田舎のねずみが、ある日、都会のねずみに誘われて都会に出てくる。そこには人間の残した、見たこともないような豪華な料理がたくさん並んでいる。けれど、いつも人間の存在におびえて暮らさないといけない。田舎のねずみは結局、都会のねずみを残し田舎に帰っていく、というちょっぴりさみしいお話です。
私は山形県の田舎出身で、東京に住む祖父母の家に、頻繁に遊びにいっていました。わかりあえない二匹のねずみの物語と、自分と祖父母の関係を重ねていたんだと思います。小さい頃、繰り返し聴いていたので、頭のなかにずっと物語のイメージはありました。
阿佐ヶ谷美術専門学校在学中に、それを絵本にまとめたところ、高く評価されたんです。そこで、ボローニャ国際絵本原画展に、応募してみることにしました。
― ボローニャ国際絵本原画展への入選が、出版のきっかけになったそうですね。世界中からたくさんの応募があり審査が厳しいため、絵本作家の登竜門と言われている展覧会です。
自宅からほど近いところに、世界80か国、約2万冊の絵本を所蔵する「いたばしボローニャ絵本館」があり、そこによく通っていたので、自然と応募してみようという気持ちになりました。
ボローニャでは現地で知り合った人たちに相性が良さそうな出版社を紹介してもらい、絵を見せて周りました。そのうちの一社が、明らかによい反応を示してくれました。言葉がわからなくて困っていると、後ろにいた方が通訳してくださって「あと二枚、絵を追加したら出版できます」と。その場で契約を結び、フランスの書店に並んだのはその一年後、ちょうど専門学校を卒業するころです。自分でもあっというまの出来事でした。
― 今回の作品展では、絵本につかわれた原画に加えて、「いなかのねずみ と とかいのねずみ」のもうひとつの結末を描いた作品を展示しています。具体的にどんな場面なのかは、実際にお店でご覧いただくとして! この一枚にどんな思いが込められているのですか?
現代の目からみると、物に溢れているけれど不安な都会の生活と、質素だけど心の豊かな田舎の生活を描いたお話に見えるかもしれません。私は子供のころ山形に暮らす「いなかのねずみ」でしたが、『とかいはせわしなくて、せせこましいなぁ』と自己完結して終わる姿がどうも納得できませんでした。山形から上京してくると、東京には田舎出身の人がたくさんいて、それぞれ適切な距離感を保ちながら支え合っていることに気付きました。私は東京がすきです。新しいものが生み出されていく感覚がある。それにイソップ童話は紀元前につくられた物語です。そう思うと、違った読み方ができるのではないでしょうか。
絵本のラストページになにげなく描きはじめたイラストが、私なりの結末になりました。楽しみに見に来ていただければうれしいです。
― くぼさんのイラストはシンプルだけれど暖かみがある。原画は、印刷された絵本とはちがって、紙の質感や色の厚みを感じることができるためか、より一層その力強さが伝わってくるように思います。
私がイラストを描く上で一番大切にしているのは「構図」です。絵本は、基本的には子供のためにあると思っているので、ページをめくるたびに緊迫した雰囲気、安心した雰囲気と情景を変えられる、言葉がなくてもストーリーを伝えることができる、そんな「構図」を発明したいと思っています。
その次に「色」。あまり色数を多くしないで、シンプルに仕上げたい。ミッフィーで有名なブルーナやブルーノ・ムナーリの絵本はとても参考にしています。
― 現在、イラストレーターとしてご活躍です。今後の目標は何でしょうか? 個人的には、「Le Rat de Ville et Le Rat des Champs」の日本語版を作ってほしいと思っています(笑)。
日本語版ほしいですね。私もフランス語読めないんです(笑)。
イラストレーターとしてはまだまだこれからです。女子美時代は漫然と過ごし一般事務職で一度就職しました。これから色んな仕事に関わっていきたいですね。最近実は、オリジナルストーリーの絵本の制作準備を進めています。これを形にすることが当面の大きな目標ですね。
― オリジナル絵本、とても楽しみです。知り合いに5歳の女の子がいるので、あんまり大きくなる前にプレゼントしたいですね。絵本作り、応援します!
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