作品展「食事の後に、もう一品」を開催中のSAN BAN CHO CAFE で、吉窪茜さんとお話しました。
― 今回の作品展では、油彩作品の展示を見た後、500-700円の低価格で小作品を購入することができます。「おいしい料理を食べた後、追加でデザートを注文する」みたいに、気軽に作品を持ち帰ってもらえたら、という企画です。作品の展示販売を目的にしたギャラリーとはちがい、カフェに来るのは、食事や打ち合わせのために来店する人たちなので、どのようにして作品をみてもらうか、を考えなくてはなりません。今回の取り組みが見る人にどんな影響を与えるか、とても楽しみにしています。
2003年から毎年個展を開催しており、今年11月に8回目を開催予定です。1回目の個展から毎年欠かさず見に来てくれている友人がいて、初めは友達付き合いで足を運んでくれていたのだと思いますが、今では作品を見に来てくれているのがわかります。これは継続の手応えを最も感じた点です。
毎年の個展を見ることで見方が変わるように、作品を買って自宅で眺めることで感じ方は変わるかもしれないと考えて企画しました。気になったら迷わず買えるくらいの価格にしたかったんです。
― 絵を描き始めたきっかけと最近の制作のテーマについて教えてください。
私が通っていた幼稚園は子どもの造形表現を大切にするところでした。直感的に絵を描いたり自由に工作したりできる環境が整っていて、作るのは楽しいという記憶が鮮明に残っています。そういう体験が制作の動機の根本にあるのかもしれませんね。
大学で絵の授業中に先生から「図と地」という言葉を聞き、今でもよく思い出して考えます。簡単に言うと、地=背景と、図=その上にある対象、という意味なのですが、何を背景と見て何を対象として見るかは、人それぞれ視点が異なります。意識的に見ているものと、無意識に見逃しているものとも言えるかもしれません。日々の生活のなかで見落としていたことに、作品を通してはっと気づくような体験をしてもらえたらいいな、と思っています。
人間は言葉を使って世界を認識しています。網ですくい取れるところは言葉に表すことができますが、すくい取れない部分もとてもたくさんあります。時間に追われたり、うまく理解できなかったりして、見なかったことにしているけれど、ずっと心のなかに引っかかって残っているものってありますよね。もっと自分の感覚を信用し、そういうものに向き合うことで、現代人は少し生きやすくなるのではないかと感じています。
― 私は、吉窪さんの個展は6回目と7回目を見ています。抽象の油彩画という点では共通していますが、それぞれの年でちょっと雰囲気がちがうなあ、と。見てすぐに違いがわかったわけではなくて、作品を購入して自宅に飾りしばらく眺めているうちに、雰囲気の違いにだんだんと気付いたんです。今年、どんなふうに感じるのか、楽しみです。
「去年と違う」とか「毎年違う」とかはよく言われます。その年の経験や考えたことが強く影響するのだと思います。初めから毎年個展を開催しようと思っていたわけではなくて、何度か開催するうちに色々と発見があり、継続が自分の成長につながると確信し、毎年1回の個展開催を続けることを決めました。私の変化によって作品も変わっていきますが、作品を継続して見ていれば、見る人自身の変化も見え方にとても強く影響すると思います。長年見てくれているのがたとえ身近な少数の人たちだけだとしても、一緒に変わっていけたら意味があると思います。そうして続けていくうちに、だんだん見てくれる人が増えたら嬉しいです。
― 最後に、今後の活動について、やってみたいこと、予定していることがあれば教えてください。
私の作品は抽象画なので、絵を見ることに慣れていない人にとっては取っつき難いかもしれませんが、なんとかそういう壁をとりのぞけないかと考えています。今回の小作品の展示販売もその一貫ですが、今後も見る人とのかかわりも意識しながら活動していきたいです。
また、今年はお茶会用に短冊を描いたり、飲食店のシャッターを塗ったり、新しい試みを行ってきました。毎年の個展はこれまで通り継続していきますが、新しいことにも挑戦していきたいと思っています。
― ありがとうございます。11月の個展でどんな作品と出会えるか、いまから楽しみにしています。
今回の「食事の後に、もう一品」は、11月の個展開催を応援する企画になっています。いつものように会計時にチケットをみせると食事の一部が応援金となり、11月の個展で発表される作品の額装費用にあてられます。たくさんのご来店をお待ちしています!
アーティストくぼあやこさんの絵本の原画展「brasserie et monogatari」が、練馬駅前のブラッスリーBon Courage でスタートしました。
くぼさんに絵本出版に至るまでの背景や、イラストレーターとしての現在の活動などについて、お話を聞きました。
― 今回、ボンクラージュで開催する「brasserie et monogatari」は、フランスのLirabelle社から出版 された、くぼさんの絵本「Le Rat de Ville et Le Rat des Champs(いなかのねずみ と とかいのねずみ)」の原画展となりました。
「いなかのねずみ と とかいのねずみ」は子供のころ『おはなしレコード』でよく聴いていた、思い出深い物語です。質素な暮らしをする田舎のねずみが、ある日、都会のねずみに誘われて都会に出てくる。そこには人間の残した、見たこともないような豪華な料理がたくさん並んでいる。けれど、いつも人間の存在におびえて暮らさないといけない。田舎のねずみは結局、都会のねずみを残し田舎に帰っていく、というちょっぴりさみしいお話です。
私は山形県の田舎出身で、東京に住む祖父母の家に、頻繁に遊びにいっていました。わかりあえない二匹のねずみの物語と、自分と祖父母の関係を重ねていたんだと思います。小さい頃、繰り返し聴いていたので、頭のなかにずっと物語のイメージはありました。
阿佐ヶ谷美術専門学校在学中に、それを絵本にまとめたところ、高く評価されたんです。そこで、ボローニャ国際絵本原画展に、応募してみることにしました。
― ボローニャ国際絵本原画展への入選が、出版のきっかけになったそうですね。世界中からたくさんの応募があり審査が厳しいため、絵本作家の登竜門と言われている展覧会です。
自宅からほど近いところに、世界80か国、約2万冊の絵本を所蔵する「いたばしボローニャ絵本館」があり、そこによく通っていたので、自然と応募してみようという気持ちになりました。
ボローニャでは現地で知り合った人たちに相性が良さそうな出版社を紹介してもらい、絵を見せて周りました。そのうちの一社が、明らかによい反応を示してくれました。言葉がわからなくて困っていると、後ろにいた方が通訳してくださって「あと二枚、絵を追加したら出版できます」と。その場で契約を結び、フランスの書店に並んだのはその一年後、ちょうど専門学校を卒業するころです。自分でもあっというまの出来事でした。
― 今回の作品展では、絵本につかわれた原画に加えて、「いなかのねずみ と とかいのねずみ」のもうひとつの結末を描いた作品を展示しています。具体的にどんな場面なのかは、実際にお店でご覧いただくとして! この一枚にどんな思いが込められているのですか?
現代の目からみると、物に溢れているけれど不安な都会の生活と、質素だけど心の豊かな田舎の生活を描いたお話に見えるかもしれません。私は子供のころ山形に暮らす「いなかのねずみ」でしたが、『とかいはせわしなくて、せせこましいなぁ』と自己完結して終わる姿がどうも納得できませんでした。山形から上京してくると、東京には田舎出身の人がたくさんいて、それぞれ適切な距離感を保ちながら支え合っていることに気付きました。私は東京がすきです。新しいものが生み出されていく感覚がある。それにイソップ童話は紀元前につくられた物語です。そう思うと、違った読み方ができるのではないでしょうか。
絵本のラストページになにげなく描きはじめたイラストが、私なりの結末になりました。楽しみに見に来ていただければうれしいです。
― くぼさんのイラストはシンプルだけれど暖かみがある。原画は、印刷された絵本とはちがって、紙の質感や色の厚みを感じることができるためか、より一層その力強さが伝わってくるように思います。
私がイラストを描く上で一番大切にしているのは「構図」です。絵本は、基本的には子供のためにあると思っているので、ページをめくるたびに緊迫した雰囲気、安心した雰囲気と情景を変えられる、言葉がなくてもストーリーを伝えることができる、そんな「構図」を発明したいと思っています。
その次に「色」。あまり色数を多くしないで、シンプルに仕上げたい。ミッフィーで有名なブルーナやブルーノ・ムナーリの絵本はとても参考にしています。
― 現在、イラストレーターとしてご活躍です。今後の目標は何でしょうか? 個人的には、「Le Rat de Ville et Le Rat des Champs」の日本語版を作ってほしいと思っています(笑)。
日本語版ほしいですね。私もフランス語読めないんです(笑)。
イラストレーターとしてはまだまだこれからです。女子美時代は漫然と過ごし一般事務職で一度就職しました。これから色んな仕事に関わっていきたいですね。最近実は、オリジナルストーリーの絵本の制作準備を進めています。これを形にすることが当面の大きな目標ですね。
― オリジナル絵本、とても楽しみです。知り合いに5歳の女の子がいるので、あんまり大きくなる前にプレゼントしたいですね。絵本作り、応援します!
<関連ページ>
● 絵本原画展「brasserie et monogatari」
● くぼあやこさんの絵本作りを応援する
● くぼあやこさんへメッセージをおくる
おぐまこうきさんの作品展「みんなの森」がSAN BAN CHO CAFE で開催中です。子どものらくがきのような作品が、店内に散りばめられました。 「1000枚の絵を描きたい」と話すおぐまさん。日々、描きながらおぐまさんが考えていることを、一言ずつメッセージとしていただきました。
― 日頃どんなことを思って、絵を描いていますか?
嬉しかったり、楽しかったり、怒っていたり、悲しかったり、、日々感じる気持ちの流れを絵に込めています。
― 「子どもの仕草が好き」ということですが、どんなところに心が魅かれるのでしょう?
すごく「自然」なところだと思います。とても可愛らしい面と同時に、とても激しい面も併せ持っているところにも魅かれます。
― 作品展「みんなの森」に足を運んでいただくみなさんへメッセージ
三番町カフェは、とても素的な場所なので、僕の絵も一緒にゆっくり楽しんで頂けたら嬉しいです。
― 今後の活動予定、目標についてお聞かせください
次に創りたい作品のイメージがあるので、それに向かって制作をしていきたいです。

設営風景: 壁一面に作品を配置していきます

小さな人形作品も店内に数点。色鉛筆を握った姿が、かわいい。

「みんなの森」ではみなさんが描く「森のいきもの」の絵を募集しています。お店にクレヨンと紙をご用意しております。おぐまさんとコラボ作品をつくるチャンス?!

おぐまさんの作品が店内のあちこちにちりばめられています。楽しい空気につつまれた空間になりました。ぜひ一度お立ち寄りください。
> おぐまこうきさんへのメッセージ・質問、作品に対する感想は、こちらにどんどん書き込んでください。
<関連ページ>
● おぐまこうき作品展「みんなの森」 2010.7.5 – 8.21
カナダ生まれのアーティストRob Judges の作品展「ROB TV」 が2010年6月28日よりスタート。Dexee Diner 恵比寿・松濤・渋谷の3店舗で、それぞれ異なるコンセプトの作品を展示しています。設営準備で訪れたDexee Diner 恵比寿店でROBさんにインタビュー。パートナーであるYUKIさんの通訳でお話しました。
― 70-80年代のPOPカルチャーが創作するうえでの刺激の源となっている、とプロフィールにありますが、その魅力は何でしょうか?
1975年にカナダで生まれ、アメリカンコミックやPOPカルチャーに囲まれて育ってきたから、僕の作品にそれらの要素が取り入れられるのはとても自然なことだよ。特別な理由はなくて、ただ70-80年代のポップカルチャーを僕は愛し続けている、ということだと思う。
現代のカルチャーにネガティブなわけじゃないけど、コンピューター全盛の時代になって大切なものを失ったと感じることもある。70-80年代はまさに激動の時代で、伝説的なアーティストも多く輩出されたけれど、みんな自分の目で見て体験した世界を自分の手で表現していた。当時の作品が持つ暖かみやウイットは、今でもとても刺激的でユニーク。
そして、ワインが時を経て熟成していくように、僕の内部でPOPカルチャーはむしろ年々成熟し深みを増している。
― 「ROB TV」ではTVのチャンネルにたとえて、各店舗で異なるコンセプトの作品を展示しています。1ch 恵比寿店のコンセプトは「Totem Pole」。トーテムポールは北米のインディアンが集落の門前や建物内に設置した柱状の木の彫刻ですね。ロブさんは木のキャンバスにペイントするというスタイルです。
トーテムポールは動物や植物、人間の顔など、様々なモチーフを積み上げることで、一族の歴史や故人への敬意を表している。僕の描く「Totem Pole」も、様々な要素が混ざり合っている。異質な要素のつながりに込められた意味をイメージしながら、楽しんもらえると嬉しいね。
― 2ch 松濤店は「Character」は、いろんなキャラクターが登場する小作品群です。
子供の頃、父親の本に恐竜を描いたり、オリジナルのヒーロー、オリジナルの漫画を描いて過ごしていたし、今でも暇さえあれば、いろんなキャラクターを描いてしまう。色んなキャラクターを作りだすのが好きなんだ。アメリカンコミックはもちろん、ガッチャマンや手塚治虫など日本の古い漫画に出てきそうな、初めて見るのに懐かしさのあるキャラクターに出会えると思うよ。
― 3ch 恵比寿店は「Chinatown」がコンセプト。実際、トロントのチャイナタウンに暮らしていたことがあったそうですね。
そう。全く読めない漢字のネオンサインの氾濫、ごちゃごちゃしたビジュアルがとても刺激的だった。初めは街全体を描いていたんだけれど、だんだんネオンサインが肥大化してキャンバスを埋め尽くしてしまったんだ。ネオンサインに書かれた言葉の連なりに隠されたメッセージを探ってみてほしい。
1999年に初めて日本を訪れた時、それまで刺激を受けてきたチャイナタウンを何倍にも膨らませたような銀座や新宿の光景にかなりショックを受けた。翌年改めて日本に来た時には、街の写真を撮って廻ったよ。2005年から東京を拠点に活動しているけれど、渋谷は今でも刺激的な街のひとつ。街中にある大きな看板、モニターの映像、色とりどりの洋服、CDショップもたくさんあるし!
― 7月10日開催のイベント「Hot Times!」は、ロブさんのDJプレイやLive Painting が見られるということで、こちらも非常に楽しみです。
音楽も大好きだったから、高校生の頃に趣味でDJをはじめたんだ。不定期に開催していたイベントに“Hot Times”という名前をつけたのは2002年の頃。DJ ○○みたいなプレイヤーが自分のパフォーマンスを見せるんじゃなくて、70-80年代のROCKやPOPSを中心に、HIP HOP、レゲエ、Jazz まで幅広く、自分たちの好きな音楽をかけながら、みんなでカジュアルに楽しめるイベントだよ。
― イベント当日は私も「ROB TV」のオリジナルTシャツを来て参加する予定です。 Dexee Diner で作品を観てROBさんを知った人たちに、たくさん参加していただけるとよいですね。ワールドカップに負けないくらい、熱く盛り上がりましょう!
<関連ページ>
● イベント:ART CAFE & Hot Times! (7.10 Sat.) 【参加申込 受付中!】
● ROB TV
(文:谷岡 拡)
アーティスト森下沙織さんの作品展「からすの空想世界」が、SAN BAN CHO CAFE にて開催中です。2歳になる娘・ルルちゃんを連れて来店した森下さんと、20点近い作品に囲まれながらお話ししました。
― 僕と森下さんは同じ1983年生まれです。幼少時代の思い出、絵を描き始めたきっかけ、いまに至るまでの道のりをまずお聞きしたいです。
絵を描くのは小さい時から好きで、小学生の頃は漫画家になりたかった。当時、スラムダンクが大流行してたじゃないですか(笑)。でもストーリーを作るのはあんまり得意じゃなくて、テストの裏面に前の席の子の後姿を描いたりして過ごしてましたね。中学三年になって進路を選ばなきゃ行けなくなった時に、獣医になりたいという夢もあったんですけど、結局、美術科のある高校に通うことにしました。
美術をきちんと勉強し出したのは高校からです。日本画、油絵、彫刻、朝から晩まで描き続けました。でも油彩は、自分の絵が画材の重さに負けているような印象を拭い切れなかった。悩んだ末、自分の原点である漫画に帰るつもりで、黒インクのペン画に着色する今の形式で描き始めたんです。
― 初めて森下さんの作品をみたときに、僕は『サロメ』にあるビアズリーの挿絵を思い出しました。
近くに美術館がなかったので、図書館でいろんな画集を見てました。ある日ビアズリーの作品に出会い「あっ似てる!」と思いましたね。ビアズリーはとにかく構図が巧みで。ロートレックも好きです。線描の美しさに魅かれるんです。
― 単に描き方の印象だけではなくて、例えばビアズリーの描く『サロメ』の挿絵は、戯曲の中の特定の場面を表しているというより、そこに広がる物語世界のイメージが喚起されるんです。森下さんの作品からも、物語性を強く感じます。
そう言って頂けることは多いですね。例えば『春や、春』という作品は兄夫婦のために描いたものです。ヤモリは「家守」とも書き、苺には「幸福な家庭」という花言葉がある。でも、そういう背景を理解してほしいとは思いません。観る人によって異なるイメージが膨らんで、それぞれの感受性を刺激できるものに価値があると思っています。絵から受けるイメージを自由に膨らませてそれぞれの物語を作ってもらえたらうれしいです。
「自分の感受性くらい」という茨木のり子さんのとても力強い詩があります。自分が絵を描く上で叱咤激励される詩でもあり、自分の作品を通して感じてもらいたい世界観のひとつです。
― その後、鹿児島から東京に出てこられたんですよね。
高校を卒業して芸術系の短大に入学したのですが、先生と衝突したりして辞めました。バイトしながら家でひたすら絵を描いていたのですが、イラストレーターになろうと一念発起して単身東京に出てきました。出版社に売り込みにいったのですがなかなか仕事は見つからず、ムカデのでるアパートでの生活は大変でした(笑)。井の頭公園のアートマーケッツでポストカードを自作して、販売したこともありました。これが好評で飛ぶように売れました。自信にはなりましたね。
その後、結婚し出産してしばらく描けない時期が続きましたが、ようやく娘も二歳を過ぎて、改めて絵を描くことができるようになりました。ぼんやりしているときはたいてい何を描こうかと考えてます。高尾山が私にとってパワースポットなので、「はやく高尾山に登りに行きたいな」とか(笑)。
― 当時の販売されていたポストカードをいまお店で無料配布していますが、かなりお得ですね(笑)。これから再始動していくにあたって、チャレンジしたいこと、目標はありますか?
伊藤若冲や田中一村、酒井抱一などを参考に、日本画について勉強中しているところです。水干絵具という日本画の画材を使って地塗りをしてみたり、日本画の画材・技法を自分なりに取り入れることで、おもしろい作品がつくれるんじゃないかと思っています。

― いま進行中の新作は、花鳥風月がモチーフになっていてより日本画風になってますね。これから森下さんならでは仕上がりになっていくのが、とても楽しみです! 7月3日(土)の新作発表会を楽しみにしています。ありがとうございました。
<関連ページ>
● 新作発表会 の詳細 【参加申込 受付中!】
● 展示の様子
(文:谷岡 拡)
Dexee Diner 恵比寿店、松濤店、渋谷店の3店舗同時開催となった展示企画 “Three Diners” では、アーティスト 遠藤和希子さんの新作を含む11点の絵画作品を展示しています。
2010年4月、展示の打合せのために、小雨が降るなか、Dexee Diner 恵比寿店に来店した遠藤さんに、現在の活動や今回の展示についてお話をうかがいました。
― 遠藤さんは武蔵野美術大学建築学科を卒業後、インスタレーションを中心に活動され、2008年から絵画作品の制作をスタートされています。絵を描くことの原体験というか、思い出話みたいなところから、お聞きできればと思うのですが。
北海道旭川の実家に暮らしていたころ、家の前が砂利になっていて。おばあちゃんと二人で、石を選んで油性マジックで顔を描いていたのが最初でしょうか。私はキラキラな瞳の漫画っぽい絵を描いてたのですが、おばあちゃんの描く絵はシュールで面白かった。細長い石を選んできて、おばあちゃんに描いてもらうのが楽しかったり。日が暮れたら、家族の似顔絵を描く、毎日そんなふうにして絵を描いていました。
いまもずっと人を描いてますけど、人を描くことは私にとってとても自然で、描いていて楽しいんです。
― 人に対する関心、描くおもしろさってどういうところからくるんでしょうね。
バレエを観るのが好きなんです、NHKでよく放送しているじゃないですか。バレエを観たあとは無性に描きたくなります。バレエには歌詞も台詞もありませんが、振り付け、ダンスで物語をつたえます。人間の背景にひろがる世界をイメージするのが好きなんですかね。
最近、コンテンポラリーダンスや演劇にも興味があって、先日チェルフィッチュ※1の演劇『わたしたちは無傷な別人であるのか?』を観に行ったんです。舞台上の役者から言葉を投げかけられるのですが、まるで読書をしているときのようにイメージが眼の前に立ちあがってきて、想像力を掻き立てられるんです。
( ※1 岡田利規が全作品の脚本と演出を務める演劇カンパニー )
― 遠藤さんの作品は大きなキャンバスに「女性」を描いたものが多くて、作品を観ているとその「女性」の向こうにイメージが広がっていくという印象がありました。それで今回の “Three Diners” では、作品を観た人たちに、それぞれどんなイメージを持ったのか、カードに「女性」の「声」を書き残してもらうという企画にしたんです。
平面的な人の絵を描きながら、背景の余白の色や構図を大切にしていて、背景に立ち現われるイメージを感じてもらえたらと思っています。今回、みなさんがどんな「声」を書いてくれるのか、とても楽しみです。とにかく自由に書いてほしいですね。集まったカードを使ったインスタレーション作品がつくれたらいいなと思っています。
― インスタレーション! それは楽しみですね。今後の活動予定について、もう少しお聞かせください。
これまで通り絵画の制作は続けますが、絵画作品を取り入れたインスタレーションや、映像作品など新たな分野にもチャレンジしていきたいと思っています。
すでに決まっている発表の場としては、5月に開催される釜山の国際アートフェアに出品予定です。
― 新作や展示の予定が決まればLittlefan.net でも告知させていただきます。最後に、“Three Diners” にいらっしゃる方や読者の方にメッセージがあれば、お聞かせください。
5月30日まで作品を展示しているので、ぜひ作品をみていただき、「声」をカードに書き残していただけると嬉しいですね。とても楽しみにしています。
他には、絵のモデルになってくださる方がいればと思うのですが、女性に裸になってもらわないといけなくて。洋服に影響されず描きたいんです。
― 残念、モデルに立候補しても、僕ではまったく役不足ですね(笑)。
(文:谷岡 拡)
栗山絵理菜さんの作品展「ひかり、鼓動 展」が、Double Tall Cafe 渋谷店ではじまりました。開催初日の2010年4月24日は、すっきりと晴れて春らしい陽気です。午前中に作品の搬入・設置を終え、午後ランチを食べながら、栗山さんとお話しました。
― 「ひかり、鼓動 展」で展示されている作品は象をモチーフにしたものばかりです。今日、栗山さんが身につけているアクセサリーや鞄にも象がみえます(笑)。象への深い愛情を感じますね。
象、好きなんです。母親が絵画教室を営んでいたので、小さいときからずっと絵を描 いていました。象を描き始めたのは、高校三年生の夏休みの頃ですね。大学一年生の冬にタイへ旅行したのですが、タイの一部の地域では、象は家族同様に扱われていて身近に暮らしているんです。象使いのいる宿に一泊して、象と一緒に山に登ったり水浴びをしたり泥んこ遊びをしたりしました。象と遊ぶのに夢中になっている合間に、スケッチを重ねていると作品のイメージが膨らむんです。帰りの飛行機では、もう早く絵が描きたい、という感じになって。キャンバスに向かって描き始めると、楽しかった気持ちがまた高まってきて、ドキドキします。
― 象を描き続けて五年目、ということですね! それだけの間、描き続けられる理由、象を描く楽しみって何なんでしょう? きっと描き続けるなかで壁があって、チャレンジがあって、変化があるのだと思いますが。
そうそう、タイ旅行から帰ってきて描いた作品を、近所のデパートで展示したんです。展示が終わって数ヶ月経った頃に、デパートで作品をみたという女性から電話がかかってきて、「どうしてもその絵のことが忘れられなくて、可能であれば譲ってほしい」ということでした。自宅まで来てもらってあらためて作品をお見せしたら、その女性は「この絵をみていると、とても落ち着く」と 言って涙を流したんです。とても驚きました。その時、何かを伝えるということ、作品から何を感じてもらうかということに思い至ったんです。最初のころはただ象を描くのが楽しくて描いていましたが、もっとがんばらないといけないと思いました。
― 栗山さんは確かに象を描いているけれど、風景として、あるいは写実としてあるというより、詩情的なものが描かれているように感じます。今回の作品展を、二つの作品のタイトルをとって「ひかり、鼓動」と題したのも、栗山さんの作品に私が感じた、生命の持つ強さ、生命という存在の確からしさを表現するのにぴったりだと思ったからです。
大自然を目の前にしたときのふるえるような感動、存在感。大好きな雑貨屋さんでお気に入りのモノを見つけたときの歓び、一目惚れしたときの感覚。最近、そんな感情の部分をより意識して表現するようになりました。そうすると、だんだん象の輪郭が曖昧になってきたんです。象であることが重要なのではなくて、象を通して生命を描いているように感じています。
― なるほど。栗山さんはしばらく象を描き続けるんでしょうね。作品がどんなふうに変化していくのか、これから楽しみです。今後の予定についてお聞かせください。
銀座ミレージャギャラリーで6月2日から7日まで開催されるグループ展「どうぶつえん゜」と、銀座のギャラリーLa Mer で7月5日~10日まで開催されるグループ展「天の川紀行」に新作を出品することが決まっています。おそらく象を描いていると思います(笑)。
秋以降は卒業制作に入りますが、体全体をつかって描けるような大きな作品にチャレンジしたいと思っています。
― 今回の作品展を通して、これからの新作づくりをみんなで応援できたらと思っています。楽しみにしています!
(文:谷岡 拡)